本記事では懲戒解雇に至る理由について解説しています。
懲戒解雇は気軽にできることではありません。
労働契約法や労働基準法などの関連法律や判例に基づいて、懲戒解雇に関するルールが形成されています。
労働契約法の第15条では懲戒処分に関して言及されており、第16条では解雇について言及されており、「懲戒及び解雇は、正当な理由のない場合は、効力を生じない」とされています。
出典:厚生労働省「・労働契約法(◆平成19年12月05日法律第128号)」(懲戒)
第十五条 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
この条文から、懲戒解雇が適法であるためには正当な理由が必要であることが示唆されています。
これはかなり重要です。もしあなたが懲戒解雇されそうなら懲戒解雇に至る理由が正当なものなのかどうかを追求してください。
解雇が不当なら無効にできます。相手の言葉を鵜呑みにして全てをすぐに受け入れず、何故?の視点を持ってくださいね。
また、労働基準法の第20条では、就業規則について規定されており、懲戒解雇に関する規定も就業規則に記載することが求められます。
出典:厚生労働省「・労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)」(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
② 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
③ 前条第二項の規定は、第一項但書の場合にこれを準用する。
職場で実際に就業規則を確認したらちゃんと記載されていました。
懲戒解雇は最後の手段
懲戒解雇は、労働者が業務上の過失や不適切な行為、違法行為などの重大な理由がある場合に、雇用者が行使できる最後の手段です。
そして、労働法において厳格に制限されています。
しかし、懲戒解雇を行うには、一定の要件が満たされている必要があります。
以下の要件を満たす必要があります。
- 明確な懲戒規定があること: 雇用契約書や就業規則に明確な懲戒規定が定められていることが必要です。
- 客観的・合理的な基準があること: 懲戒解雇の対象となる行為が、他の従業員と比較しても客観的・合理的な基準で評価されていることが求められます。
- 事実認定が適切であること: 雇用者は、懲戒解雇を行う前に、十分な調査・事実確認を行い、解雇理由を確定させる必要があります。
- 懲戒解雇が社会通念上相当であること: 解雇の理由が、一般的に考えて懲戒解雇に値するものであることが必要です。例えば、重大な業務上の過失や業務に対する意欲の欠如、業務に適応できない場合などが該当します。
- 内容・程度・期間に照らして解雇が相当であること: 労働者の過失や不適切な行為の内容、程度、期間などを考慮し、解雇が適切な措置であることが求められます。
懲戒解雇が適切であるかどうかは、具体的な事例によって異なり、適切な懲戒解雇を行うためには、十分な事実の認定や検討が必要です。
万が一、不当な懲戒解雇が認定された場合、雇用者は労働者に対して、再雇用や損害賠償を求められることがあります。
解雇に関する規制が厳しいですが、それだけ会社側にとっても労働者側にとっても重大なことなんです。
懲戒解雇の理由ランキングトップ10
懲戒解雇の理由にはさまざまなケースがありますが、ここではその理由をランキング形式で10個ご紹介します。
懲戒解雇されそうな人、された人は自分がどこに該当するのか考えてみてください。自分がなんで解雇される状況にいるのかを分析することは人生立て直しには大切です。
1位 犯罪行為の関与
従業員が窃盗、詐欺、暴力行為などの犯罪に関与した場合、懲戒解雇の対象となります。
2位 業務上の重大な過失
会社に損害を与えるような重大なミスや不手際があった場合、懲戒解雇されることがあります。
3位 社内規則の違反
会社の社内規則を繰り返し違反し、改善が見られない場合は懲戒解雇されることがあります。
4位 職務放棄
業務を無断で放棄したり、無断欠勤が続いた場合、懲戒解雇されることがあります。
5位 勤務態度の悪化
上司や同僚とのトラブルや勤務態度の悪化が原因で、業務に支障をきたす場合には懲戒解雇されることがあります。
6位 性的ハラスメントやパワハラ
職場で性的ハラスメントやパワーハラスメントを行い、他の従業員に対する悪影響が大きい場合、懲戒解雇されることがあります。
7位 機密情報の漏洩
会社の機密情報を故意または過失によって漏洩した場合、懲戒解雇されることがあります。
8位 職場でのアルコール・薬物使用
職場でアルコールや薬物を使用し、業務に支障をきたす場合には懲戒解雇されることがあります。
9位 偽造・改ざん行為
会社の書類やデータを偽造・改ざんし、業務に悪影響を及ぼす場合、懲戒解雇されることがあります。
10位 他者への詐欺行為
顧客や取引先、同僚などに対して詐欺行為を行った場合、懲戒解雇の対象となります。信頼関係が損なわれ、業務に深刻な影響を及ぼすため、このような行為は厳しく対処されることが一般的です。
懲戒解雇されるデメリット
懲戒解雇のデメリットは大きく、労働者にすぐに影響を及ぼします。
収入源の停止から社会的不利な状態に陥るのは言うまでもなく、既にあなたは肌で体感しているでしょう。
ここでは懲戒解雇後のお金の話である失業保険、退職金と再就職への壁について説明します。
お金がなければ生活することが出来ませんし、収入源を取り戻さなくてはならないはずです。次の3つを今後の過ごし方の参考にしてみてください。
失業保険
懲戒解雇をされても失業保険を受け取れます。
しかし、懲戒解雇の内容によっては「重責解雇」の分類に入ります。もし重責解雇なのであれば、受給までの待機期間が伸びたり、受給額が減少したり制限を受けることになります。
この制度をそもそも知らない人も案外いますのでこの機会に学んでおきましょう。
退職金
懲戒解雇の場合、退職金の受給が認められないケースが多く、経済的な負担が増すことがあります。
会社側としてもクビにした社員に退職金なんか渡したくないと思うのは当然ですね。
転職活動が不利になる
懲戒解雇の経歴があると、一部の企業は採用を敬遠する傾向があります。そのため、選択肢が狭まり、就職活動が難しくなります。
退職理由を聞かれた時の面接会場の空気感は緊張感がものすごく上がります。
懲戒解雇されたときの対処法
懲戒解雇された場合でも、適切な対処法を取ることで、問題解決や新たな職への道が開けることがあります。
冷静に状況を分析し、再就職においても不当解雇への対応においても弁護士や転職エージェントなどのプロフェッショナルなサポートを受けることが重要です。
新たな職を探すために、すぐに履歴書や職務経歴書を整理し、転職サイトや人材紹介会社を活用して求人情報を収集してください。
僕がクビになった時はよくCMで流れているduda転職を利用しました。とても使いやすいサービスでした。
不当な懲戒解雇であると判断した場合、労働相談所や弁護士に相談し、適切なアドバイスやサポートを受けましょう。
裁判や労働審判を利用して解決を図ることも検討してください。
懲戒解雇は家族にバレる
結論…「バレる」です。
懲戒解雇を受けて家族や友人に知られたくないと思うかもしれませんが、隠し通すことが難しい理由は以下の通りです。
- 退職証明書が郵送されてきてバレる
- 離職票が郵送されてきてバレる
- 給料が突然ストップした関係で銀行通帳にお金が入らなくてバレる
その他、各家庭でお金の使い方や仕事のスケジュールに合わせて予定を組んでいる場合が多いので、違和感が生じることでしょう。
ですから、正直に話して家族で同じ対処法を考えて前に進んだ方が無難なのです。
単なる解雇も変わりません。ちなみに僕がクビになった後は隠さずに正直に話しています。泣き崩れながらでしたが。
やらかしてクビになった時のことを次の記事に書いています。
まとめ
懲戒解雇は雇用者側であってもかなり慎重になって判断されます。
それは法律が解雇を厳しく制限しているためです。
もしあなたが解雇されたとき、まずは解雇理由を元に自分自身でも不当ではないかを慎重に考えてください。